勉強も兼ねて、渋谷で開催中の「ムパタとその仲間たち展」に行ってきました。
1980年代に一世を風靡したプリミティブアートの第一人者、 MPATA(ムパタ)をフィーチャーした作品の展示を開催します。
ティンガティンガ派を代表する画家のムパタは、1984年とある日本人に見出されニューヨークのギャラリーで個展を開催し、アメリカの著名画家の支持もあり一世を風靡しました。ムパタの死後もムパタとその仲間たちが築きあげた工房では、現在でも数多くの画家たちが創作活動を続けています。
当店でもおなじみのタンザニア絵画「ティンガティンガ」派の画家、ムパタさん。1984年のニューヨークの個展(本人不在)で大成功したのですが、所在不明に。1985年にその死が確認されました。
展示品は一点のみが原画で、あとは高度なデジタル技術で「リ・クリエイト」されています。
ちなみに昨年は、銀座でフェルメールのリ・クリエイト作品を観ました。いわゆる「フェルメールの部屋」で記念撮影も…。
兄のE.S.ティンガティンガに直接手ほどきを受けたというムパタ。
初期ティンガティンガ派らしいフォルム、素敵な色合い。
奥が本物、手前がリ・クリエイト。
本物の方はよく目をこらすとキャンバス地が見えましたが、それにしてもリ・クリエイト、すごい技術です!
ほかの作家のリ・クリエイト作品もたくさん並べられていました。未亡人となったエリザ・ムパタさんの作品も独特です。
やはり時代が下ると、技術、モチーフ、構成等、様々な個性が顔を出します。
ティンガティンガ派の画家は、「来日して初めてライオンを見た」という逸話もありますが、いまは書籍の流通が増えたり、テレビの普及、インターネットの登場でディテールをたくさん学べそうですね。
実は、たまたま古書店で買った「ムパタ本」を持っています。
帯に故中上健次さんや村上龍さん、浅田彰さん、坂本龍一さん、ユーミンといった80年代最先端の文化人のお名前が(TOKIO、というのはもちろんアイドルグループではなく、靴デザイナーの故熊谷登喜夫さん)。それぞれがムパタ作品をテーマにした短編小説、評論、エッセイ、曲(楽譜)、靴、アート作品などを捧げてます。
今回の会場が西武ということもあり、当時の「西武/セゾン文化(百貨店による先端文化の発信)」ともタイミングが合った芸術家だったのかな? と本を読み返しながら思います。率直に言って、これほど豪華なメンバーで本が出たことはムパタさんの作品の持つ力もあるでしょうけれど、バブル期だったから、ということも関係あるでしょう(それと、「ウィー・アー・ザ・ワールド」も1985年)。
優れたティンガティンガ派の画家はその後も出現してますし、セネガルで触れたスレイマン・ケイタさんの作品は素晴らしいものでした。でも、今後にこのように「一人のアフリカ人画家に多くの文化人がメッセージを捧げる本」を出版することは、なさそう…?
それはそれとして、浅田彰さんはこう書いてます。
寂しく、しかも明るい。それがムパタの絵だ。
むろん、そこにあるのは湿っぽい主観的な感情ではない。コスミックな寂しさ、そしてコスミックな明るさとでも言えばいいだろうか。
その不思議な軽みが、ぼくたちの心をすこしひろやかにする。
入場時に数量限定のピンバッジをいただけました。
左ページはキース・ヘリングがムパタに宛てたメッセージ。今回の企画でこの現物も展示されてました。
10月7日(月)まで、西武渋谷店A館7階で開催しています。
梅田洋品店の梅田昌恵です。アフリカ諸国へユニークな布や雑貨を買い付けに行き、南青山の小さなアトリエでオリジナルのファッションアイテムに仕立てています。このブログではアフリカのこと、作品のこと、イベントやオンラインショップからのお知らせなどを綴ります。