2011年アクラへの旅(1)ロンドン・ミュージカル”FELA!”編

さてさて、お待たせしました!

今回は「2011年アクラへの旅」と題し、訪れた以下の都市ごとに分けてご報告しようと思ってます。

(1)ロンドン”FELA!”編 ←いまここ
(2)パリ”TEIKEIとドゴン”編
(3)モンペリエ”Agathe”編
(4)アクラ編(たぶん数回に分けます)

というわけで、成田→パリ到着から数日後に、ユーロスターという海底トンネルを通る電車に乗ってロンドンへ行きましたよ。

実は目的はロンドン見物ではなく、ニューヨークのブロードウェイから英国国立劇場に来ていたミュージカル「FELA!」の観劇なのでした。

完全に、それだけのために、ロンドンへ…!

FELA!のポスター

フェラ・アニクラポ・クティ(1938-1997)というミュージシャンがナイジェリアにいたことをご存知でしょうか。

ジャズやハイライフ、伝統的リズム、ジェームス・ブラウンのファンクを取り入れた「アフロビート」の創始者。「ブラック・プレジデント」。

すごい人です。もう、とんでもない人。触ると危険。

この人の何がアブナイかというと…

まぁ先にミュージカル動画を観ていただきましょう!(オリジナルではなくミュージカル版から聴くのは、あとで問題を残すかもしれませんが…)。

“Water No Get Enemy”

水を敵にまわすことはできない。水はいつも必要で、洗い物の時、スープを作る時、暑い時、子供を育てる時、あるいは水に子供を殺された時でも、あなたは水を使う。水がなければ死んでしまう」。

水=民衆と解釈したとき、フェラが何を批判して歌っているのか、だいたいわかりますね?

代表曲、”Zombie”です。

ご覧のとおり、この曲は軍人をゾンビ(生ける屍)にたとえているのです(ナイジェリアは軍部が政治を支配することが多かったのです)。

こういった曲(演奏時間は30分近いものばかり)を作り、歌い、サックスを吹き、踊り、腐敗した政府を挑発し、何百回も法廷に引っぱり出され、27人のバンドの女性メンバーと一斉に結婚し、投獄され、その他もろもろ…。

上半身裸になります、フェラは。

パンツ一丁の姿も有名です。

ですが、

この主演俳優さん筋肉がマッチョ過ぎて、史実とやや違います(笑)

でも歌って踊って演奏して喋って…すばらしい役者さんです。

実際のフェラ・クティ、1971年。

フェラ・クティ作品は最近、紙ジャケット仕様の国内盤が再発売されてます。

それ以外にもたくさんのアルバムがありますが、とりあえずベスト盤がいくつか出てるので入門に最適だと思います。

ちなみに知り合いのyojisekimotoさんはフェラの遺作”Underground System“を「20世紀を代表するクラシック」「タイトル曲におけるピアノは、モーツアルトやベートーベンのコンツェルトに匹敵する」とまでアマゾン・レビューに書いてました。

私もおすすめします。
Underground System

フェラ・クティ紹介はこれくらいにしておき、ナショナル・シアターに戻ります。

劇場に入ると、すでに名曲”Gentleman”などがバックバンドの演奏で流れていました。

やがて、派手な衣装の主役の登場…

舞台はナイジェリア、ラゴス。フェラ所有の演奏会場「シュライン」。

1978年の夏。母フンミラヨの死の半年後。

「今日が最後のコンサートだ」

楽しく悲しく美しい物語が展開されました。

女性が多く登場します。

まず、素敵なダンサーたち。一人ひとりが個性的なルックスです。腰を振ると、ひらひら揺れるようになっている超ミニスカートがきれいでした。

そして、フェラの人生には女性の重要人物が二人いて、劇中にも登場します。フェラ以外に名前を与えられた登場人物といえるのはこの二人くらいです。

フェラに黒人解放運動や黒人意識の目覚めを教えたアメリカ人のサンドラと、フェミニストの母フンミラヨ。

役を演じてる二人ともに、美声を聴かせてくれました。とくに「聖母」のように扱われていたフンミラヨの劇中の存在感は強烈でした。

実際のフンミラヨ・クティも、強い印象を人々に残してます。

Funmilayo Ransome-Kuti.jpg Funmilayo Ransome-Kuti” by Source. Licensed under Fair use via Wikipedia.

ナイジェリア女性で最初に自動車を運転した人という噂も?

ガーナのンクルマ大統領の友人で、毛沢東にも会っているとか。女性解放運動の著名な活動家だったのです。

77歳の時、フェラの家「カラクタ共和国」が1000人の軍隊に襲撃されます。

彼女は二階から落とされ、その怪我のために亡くなります。

…といった話は、私は以下の2冊を読んでいたので、知っていました(おかげで英語が聞き取れなくても舞台上のストーリーについていくことができました。ほっ)。
武器なき祈り―フェラ・クティ、アフロ・ビートという名の闘い  フェラ・クティ?戦うアフロ・ビートの伝説

本といえば、この舞台の数週間後にガーナで買った子供向けの本!
子供向けのフェラ・クティの本

イラスト満載で素敵です。
ジェームス・ブラウンに「お前はアフリカのJ.Bだ」と褒められて、ちょっと微妙な感じのフェラ(笑)
ジェームス・ブラウンとフェラ

さて、ウェブでの「FELA!」レビューを読むと「素晴らしい!星四つ ★★★★☆」という絶賛もありますが、「ミュージカルじゃなくてコンサート」「なんか深みが足りない」「ウィキペディアやパンフレットに書いてある以上のスジがないし、一面的な聖人伝だ」などの辛口評価も。

いちおう、フェラの末っ子のシェウン・クティ(兄のフェミとともにアフロビートを継いでるミュージシャン)はこのショーを称えてます。「アフリカのダンスを誤解せずによく研究していて、センスよくアレンジしている振り付け」も含めて、ブロードウェイ流の舞台を気に入ったようです。

私はといえば大満足でした!

とはいえこのヒトコトでは書き足りないこともあります…が、長くなったのでそれはメルマガの方で…。

Tシャツも買っちゃいました。Ah, FREE-CAN!

フェラ・クティのTシャツ

「パリ編」へ続く

 

(2015.07.04 一部修正)